周りを気にせず成績を伸ばすための“絶対的な学力”の育て方とは?相対評価の高校入試を突破する考え方

入試のしくみを見ていると、どうしても周りの子どもの様子や倍率に心が揺れることがありますよね。
ただ、私が長く子どもたちと向き合ってきて感じるのは、「相対評価で決まる入試でも、結局は本人の力がものを言う」という、ごく当たり前の事実です。

もちろん、内申点や日々のテストは気になります。ただ、それらに振り回されてしまうと、本来伸ばすべき“自分の力”から目が離れてしまうことも多いのです。

お子さんがどんな状態にあったとしても、必要なのは一つひとつの弱点を確かめ、愚直に、丁寧に積み上げていく姿勢です。この積み重ねだけが、相対評価にふり回されない“絶対的な学力”につながります。

今回は、私が塾で子どもたちを見てきた経験をもとに、「周りではなく、自分を見る」という学習の本質をお伝えしたいと思います。

入試は本質的に「相対評価」で決まる仕組み

高校入試の話になると、「絶対評価」「相対評価」という言葉がよく出てきますが、実際にはこの二つがごちゃまぜになって理解されていることが多いように感じます。

保護者の方からも、
「内申点がよければだいぶ有利なんですよね?」
「倍率が上がったら、それだけで不利になるということですか?」
といったご質問をよくいただきます。

まず、ふだんの定期テストを考えてみましょう。
平均点が何点であれ、学校で決められている評価基準によって評価が決まっていきます。
それをもとにして「絶対評価」として通知表の評定、いわゆる内申点がつくわけですが、
正直なところ、これも完全に絶対評価とは言い切れません。同じ点数でも先生やクラスの状況によって評価が微妙に変わることがあるからです。

そして、最終的に大きなウェイトを占めるのが、入試当日の得点です。
ここはもう完全に相対評価の世界です。単純化してしまえば、得点の高い順に合格していく仕組みです。
「自分が何点取ったか」だけではなく、「周りの受験生と比べてどれくらい点を取れたのか」が勝負になります。

極端な例ですが、自分が70%しか解けなかったとしても、周りの多くが60%前後なら合格しますし、その逆もありえます。入試の本質は、ここにあります。
自分の出来だけを見て一喜一憂していても、周りとの相対的な位置が変わらなければ、合否は動きません。

ここで、多くの方が気にされるのが「倍率」です。倍率が高くなると、確かに落ちる人数は増えます。これは事実です。
ただ、その数字だけを見て「だから自分も危ない」と結論づけてしまうのは、少し早とちりです。
倍率というのはあくまでも“全体の数字”であり、一人ひとりの合否を直接決めるわけではありません。

最終的に合否を分けるのは、その子が当日どれだけ点数を取れるかという“個人の学力”です。
倍率が高い年であっても、自分の課題に正面から向き合い、必要な勉強を淡々と積み上げていった子たちは、しっかり合格しています。
逆に、倍率が低い年でも、弱点をそのままにして本番を迎えてしまえば、思ったような結果は出ません。

だからこそ、倍率や周りの雰囲気に心を奪われるよりも、「今の自分の学力がどの位置にあって、どこまで伸ばせそうか」を冷静に見ることの方が、よほど大切です。
倍率は変えられませんが、自分の力は日々の積み重ねで変えることができます。この当たり前のことを、受験期こそ意識しておきたいところです。

入試が相対評価であるということは、変えようのない厳然たる事実です。
しかし見方を変えれば、「どんな年であっても、自分の力さえ本物になれば合格に近づける」ということでもあります。
仕組みを正しく理解したうえで、仕組みに惑わされないということが、お子さんの勉強を前向きな方向に進めるための第一歩になります。

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周囲の状況を気にしても成績は伸びない

受験が近づいてくると、どうしても周りの様子が気になってきます。

「友だちはもう過去問を解き始めているらしい」
「同級生が塾を増やしたみたいだ」
「隣のクラスの子が模試で急に点を取った」

こういった話が耳に入るたびに、心がざわつくのは自然なことです。保護者の方も、つい周りのご家庭の話と比べてしまうことがあると思います。

ただ、長年受験生を見てきた実感として、はっきりお伝えできることがあります。
それは、周囲の状況を気にしたところで、成績の伸びには全く関係がないということです。
理由はシンプルで、周りに意識を向けている時間とエネルギーは、お子さん自身の勉強には何ひとつ使われていないからです。

「友だちがやっているから」という理由だけで勉強内容や教材を変えてしまうと、本来やるべき弱点補強の時間が削られてしまいます。
もちろん、友だちから良い刺激を受けることもありますし、勉強法のヒントをもらえることもあるでしょう。ただ、その方法がわが子に合っているかどうかは、まったく別問題です。

実際に、「あの子がやっている勉強法を真似してみたけれど、かえって混乱した」という例は珍しくありません。
それまで真面目に積み重ねてきたのであれば、勉強方法というのは、その子の性格や理解度、これまでの積み重ねによってできあがってきたものです。
友だちには効果があっても、わが子には逆効果ということも起こりえます。

また、周囲の状況をじっと見ていると、どうしても「比較」が生まれます。比較がうまく働いて、やる気につながるケースもゼロではありませんが、多くの場合は逆に心を乱してしまいます。

  • 自分より進んでいるように見える
  • 自分より賢いように感じてしまう
  • 自分だけ遅れている気がして焦る

こんなふうに感じ始めると、「落ちたらどうしよう」「このままで間に合うのか」という不安ばかりが大きくなってしまい、目の前の問題に集中しづらくなります。
気持ちが揺れている状態では、どれだけ勉強時間を増やしても、内容が頭に入っていきません。

さらに言えば、他人の勉強状況を詳しく知ること自体は、お子さんの点数アップには直接つながりません。
どれだけ友だちの様子を観察しても、お子さんの答案用紙の点数が上がるわけではありませんよね。
それどころか、「あの子はあれだけやっているのに、自分は…」と落ち込んでしまい、手が止まることもあります。

成績が大きく伸びる子は、驚くほど周囲のことを気にしていません。
「自分は今ここが弱いから、今日はこれをやる」
「昨日間違えたところを、もう一度解き直す」
「この単元の基礎があいまいだから、テキストを1周やり直す」
といった具合に、自分の課題にだけしっかり目を向けて、やるべきことを淡々と進めています。

意識の向く先が“他人”ではなく“自分自身”に向いているので、かけた時間がそのまま力になりやすいのです。
だから、同じ時間勉強していても、伸び方に差が出てきます。

私は、受験期ほど「周りを見る必要はない」とお話しするようにしています。
もちろん人間ですから、まったく気にするなというのは無理があります。
それでも、 「比較しても成績は伸びない」 という事実を、心のどこかに置いておいていただけると、お子さんの勉強の集中度はずいぶん変わってきます。

成績を上げる唯一の道は「弱点の把握と反復」

受験に関する情報は本当にたくさんあります。
「この勉強法が効く」
「この教材がいい」
「このタイミングで過去問を始めよう」・・・
情報が多いほど、何を信じればいいのか分からなくなってしまうこともあると思います。

しかし、どれだけ情報が増えても、成績を上げるための本質は変わりません。
シンプルに言ってしまえば、 「弱点を把握し、それを丁寧に反復して、自分のものにしていく」
これだけです。この基本から外れてしまうと、どんなに新しい勉強法を試しても、点数には結びつきにません。

成績が伸びる子の共通点は、「やるべきことがハッキリしている」ことです。
自分がどこでつまずいているか、何が得意で何が苦手なのかを、ある程度自分で分かっています。そして、その苦手な部分を少しずつ埋めていく勉強を、コツコツ続けています。

逆に、伸び悩む子ほど、「何から手をつけたらいいのか」が曖昧なまま勉強しています。
気になる問題集を買っては少しやって止まり、
SNSで見かけた勉強法を試してみてはまた別のものに目移りする。
友だちのやっていることが良さそうに見えて、そちらに流れてしまうこともあります。

もちろん、新しい方法を知ること自体は悪くありません。
ただ、「自分は今どこで困っているのか」という弱点の位置がはっきりしていない状態で、あれこれ試してしまうと、勉強時間のわりに点数が上がりません。

たとえば数学なら、計算ミスが多いのか、文章題の読み取りが弱いのか、図形問題のイメージがつかみにくいのか。英語なら、単語不足なのか、文法があいまいなのか、長文のどこでつまずいているのか。ここが見えてくると、「今日やるべきこと」が具体的になります。

弱点を把握するうえで欠かせないのが、間違えた問題の見直しです。
丸付けをして、赤ペンで正解を書いて終わりにするのではなく、

  • どこを読み違えたのか
  • なぜその選択肢や答えを選んだのか
  • 何がわかっていなかったことが原因なのか

ここまで言葉にして確認できると、「次に同じタイプの問題を出されたときに解ける状態」に近づきます。
間違いを放置するのではなく、次の正解につなげる材料として活かせるようになると、勉強の質がぐっと上がります。

そして、弱点が分かったら、あとは反復です。
1回できた程度では、入試本番で通用する力にはなりません。人間は忘れる生き物ですから、何度も同じ種類の問題に触れてようやく、安定して解けるようになっていきます。

「前にもやったはずなのに、また間違えた」と感じる場面は、誰にでもあります。
ここで「自分はダメだ」と決めつけてしまうのではなく、「まだ回数が足りていないだけだ」と捉えて、もう一度取り組めるかどうか。
この姿勢が、入試本番の安定感につながります。

反復はどうしても地味な作業です。華やかさはありませんが、この地道な積み重ねが“本物の得点力”を作ります。
今できていないところを知り、そこに向き合い、繰り返して身につける。
このサイクルを回し続けられる子が、最終的にひとりでぐんぐん伸びていきます。

絶対的な学力をつければ相対評価から抜け出せる

ここまでお話ししてきたように、高校入試はどうしても相対評価で決まります。周囲より多く点数を取れた生徒から合格していく。この仕組み自体を変えることはできません。

ただ、この「相対評価の世界」から、ある程度抜け出してしまう方法がひとつだけあります。
それが、絶対的な学力をしっかりつけることです。

たとえば、500点満点の入試で、安定して400点近くを取れる力があればどうでしょうか。
これは少し極端な例ですが、そのレベルまで実力が上がってくると、内申点の細かな差や倍率の上下に振り回されにくくなります。
どの年度であっても、どの学校であっても、上位に入っていける力があるからです。

現実には、全員が400点を目指す必要はありません。
ただ、「絶対的な基礎力をしっかり固める」という発想は、とても大切です。土台が盤石であればあるほど、相対評価に左右されにくくなります。

反対に、基礎があいまいで「なんとなく点が取れている」状態だと、少し問題の傾向が変わっただけでも、点数が大きくぶれてしまいます。
そんな状態だと、どうしても倍率や周りの出来が気になり、心が落ち着かなくなります。
「相対評価に振り回されている」という感覚が強くなるのは、このタイプです。

本当に力がついてくると、外の情報に対する感じ方が変わります。

  • 倍率が高くても、「でも自分はここまでやってきた」という実感がある
  • 友だちの勉強状況を聞いても、必要以上に焦らなくなる
  • 模試の判定が少し悪くても、「何を直せばいいか」が見えている
  • これだけやったのだから、たとえ不合格でもなんの後悔もない心持ちになる

この状態に近づいてくると、受験勉強が“自分の力を磨く時間”に戻っていきます。
相対評価の世界にいながら、心の中では「自分との勝負」という感覚が強くなっていくのです。

もちろん、絶対的な学力は一朝一夕では身につきません。弱点を見つけて、理解して、練習して、定着させる。驚くほど地味な作業の連続です。
それでも、この道しか、相対評価に振り回されない実力をつくる方法はありません。

受験は、「勝ち方のテクニック」を競う場ではありません。
受験は、自分の力を積み上げ、その成果を試す場です。

不安や焦りが出てくると、どうしても周りを見てしまいますが、そこで一度立ち止まって、

「自分の力をつけることを、いちばんの目標にしよう」

と、親子で確認していただけるといいなと思います。
相対評価で決まる入試だからこそ、絶対的な学力がものを言います。これは、これまで多くの受験生を送り出してきた中で、私が何度も見てきた光景です。